【12億人市場に挑む】(上) インド・モディ政権発足が追い風 日本企業、再び熱視線

2014.8.20 19:29

インド・ムンバイにパナソニックが開設したLED照明などの体感型ショールーム

インド・ムンバイにパナソニックが開設したLED照明などの体感型ショールーム【拡大】

  • インド市場をめぐる日本企業の動き

 インド西部の商都・ムンバイ。チャットラパティー・シヴァージー国際空港から東へ、激しい渋滞とクラクションの洪水の中を縫うように車を走らせること約30分。中・高所得層が住居を構えるエリアに、パナソニックが買収した電設資材メーカー「アンカー」が昨年末に開設したLED(発光ダイオード)照明のショールームがある。

 ショールームは単に商品を並べるのではなく、リビングルームを設置し、照明による室内の変化を実際に体感できるようにするなど凝った作りだ。

 「国内総生産(GDP)の上昇に伴って、年収20万ルピー(約34万円)から100万ルピー(約169万円)の中高級層が増える。そうなれば、蛍光灯からLED照明へのシフトが進む」。アンカーの小栗貴(たか)樹(き)副社長はこう期待を寄せる。

 パナソニックは平成19年に約500億円を投じて、アンカーを買収した。インドを新興国市場攻略の戦略拠点と位置づけており、家電に加え、法人向けビジネスも強化。今年4月からは、デリーに山田喜彦副社長を常駐させている。

 人口12億人を超える巨大市場・インド。ここ数年は成長鈍化から抜け出せなかったが、5月にモディ新政権が発足したことで、日本企業の間で再び“インド熱”が高まり始めた。

 安倍晋三政権の「アベノミクス」と歩調を合わせるように、モディ首相が掲げるのが成長重視の経済政策、通称「モディノミクス」だ。4%台まで落ち込んだGDP成長率を、今後3~4年で好況期並みの7~8%台に戻す目標を掲げる。モディ氏は、グジャラート州首相時代に積極的なインフラ整備や外資誘致などで州経済を発展させた実績があり、その手腕に注目が集まっている。

 「新政権発足後、確実に追い風が吹いていると実感している」

 東芝の現地法人、東芝インド社の浦井研二社長は打ち明ける。開発中の工業団地で発電設備や水処理施設などの受注を目指しているが、中央政府が積極的にサポートしてくれるケースが目立つという。

 経済成長に伴うライフスタイルの多様化に合わせ、インド企業も日本企業に秋波を送り始めた。

 これまで日本企業が力を入れていたのは、自動車や電化製品が中心だったが、インドのショッピングモール運営大手「イノービットモール」のキショール・バティージャ社長は「センスの良い雑貨や家具を扱うショップに加え、娯楽不足なので、ゲーム業界などにもぜひ参入してもらいたい」と歓迎する。

 こうした声に呼応するように、無印良品を運営する良品計画は9月1日、インドへの新規出店に向け、海外事業部に「インド担当」を新設。カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングも、インドへの出店を視野に入れている。

 インド民間銀行最大手ICICI銀行傘下のICICI証券のアヌップ・バグチ最高経営責任者(CEO)は「工業機械や重工業、運輸分野などで日本企業と協力関係が結ばれるのではないか」と指摘する。

 日本企業にとって、インドは世界第2位の人口を持つ市場というだけでなく、リスク分散の観点からも有効だ。長年、主要な投資先だった中国で人件費高騰や外交問題が深刻化し、生産や販売で中国以外の地域にシフトする「チャイナ・プラス・ワン」は、もはや必要不可欠な選択肢だからだ。

 こうした期待の一方で、インフレや労働争議の多発、インフラ整備の遅れなど、インド特有のリスクも存在する。インドは本当に変わるのか。日本企業はモディノミクスの動向に熱い視線を注いでいる。

     ◇

 インドのモディ新首相が8月下旬から来日する。経済政策「モディノミクス」の進展に期待する日本企業の進出の現状やリスクを2回にわたって検証する。

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