また、白組では1つの映画の制作を終えるまで、環境を統一するために、基本的にはOSやアプリケーションの入れ替えなどを行わない。デルの保守とは4年間契約したが、「サポートにお世話になったことはほぼないぐらい、トラブルフリーでした。まあ、当たり前なんですけどね」と花房氏は笑う。ちなみに、今後の作品でも積極的によりハイエンドなワークステーションの導入を検討している。
八木氏や花房氏が言う通り、映画の本来の目的は観客にストーリーを伝えることである。「髪の毛がフサフサ揺れる」や「洋服のシワが風になびく」といった物理演算から、「映り込みまでを考慮したフレーム外の作り込み」「指紋が付くドラえもんの構築素材」、さらには「80万ポリゴンのドラえもん」「4Kテクスチャののび太君」、そして「グローバルイルミネーションを駆使した柔らかい光」や「サブサーフェイス・スキャタリングを利用した半透明効果」などの技術は補佐であり、スクリーンに映し出される感動的なストーリーこそが重要なのだ。
しかし、こうした表現でリアルさを再現しているからこそ、観客はストーリーにすんなりのめり込めることを忘れないでほしい。映画館に足を運んでもらって、映画を見終えた時に、PC的な視点で映画を振り返ってみてほしい。そこには4年間の白組のスタッフの熱意と苦労がいっぱい詰まっている。(インプレスウオッチ)