「私にも責任とプライドがあるので、自分の力でやり遂げたいと思っているんです」と40代の課長の柴田さん(仮称)。リーダーを任されたプロジェクトが遅れており、心配になった上司が介入をしたがっているとのこと。チームに一体感が乏しく、メンバーの動きが悪いことが遅れの原因であることは自覚している。しかし、任せたのであれば途中で口を挟まないでほしいと、ひとしきり上司への不満が続く。
柴田さんは勉強家で知識も豊富な理論家タイプだが、頑固なところがある。熱くなっているこの状態でアドバイスをしたところで、押しつけと受け止められかねない。
このようなときは、コーチとして気づきを促す対話が必要となる。「熱心ですね。ところで、いまおっしゃった柴田さんの責任って何ですか?」との問いには「プロジェクトを期限までにやり遂げることです!」と明快な回答。「そのために使えるものって何ですか?」には「プロジェクト・メンバーと予算」と即答。
「いまの進捗(しんちょく)は理想的ですか?」「いや、必ずしも」「それでは、柴田さんの責任を果たすために他に使えるものがあるとすれば何ですか?」「うーん、上司…かな」「柴田さんのプライドって何でしょうか?」…