【未来への伝言】古川実・日立造船会長兼CEO(上) (3/3ページ)

2014.9.29 05:00

 〈シンガポールから帰国後の1986年、米国の自動車プレスメーカー、クリアリングの大型買収案件に携わる〉

 「技術供与を受けていたライセンサー(特許権者)の企業を買収することになった。自動車産業が伸びるとの経営判断からだった。ただ、非上場企業のクリアリングは(買収額算定の基になる)株価がないため、相手が示した貸借対照表を基に純資産で買収することになった。しかし、貸借対照表が信用できないからと会社から米国行きを命じられた。帳簿の記載ミスなどを放置しながら何年もそのまま引き継ぐなど、非上場企業ゆえのいいかげんさが多く、2週間程度で終わらせるつもりだった調査が約3年もかかってしまった。帳簿に記載されていない受注契約の内容などまではチェックしきれず、トータルで100億円くらいの赤字を抱えることになった。買収した事業を続けることは難しいと判断し、最終的には売却することになった」

 〈日立造船にとっては、非常に高い勉強代になってしまった〉

 「契約した時点でデューデリジェンス(事業評価)を厳密にしておかなければならない。精査に2年も3年もかかると、契約した内容がずれていってしまう。結局のところは『おまえの(会社の)マネジメントができていれば、このようなことはなかった』と言われてしまう。契約をしてしまったら後戻りはできず、デューデリを徹底的にやることの重要性を学んだ。クリアリングはわれわれの先生だったので負い目もあったのかもしれないが、判断は甘かったと言わざるを得ない。お金の重みや痛みを直接的な失敗でなくても間接的でも経験しているかどうかは、その後の強みになる。当時の苦い経験は血となり肉となっている」(那須慎一)

                   ◇

【プロフィル】古川実

 ふるかわ・みのる 大阪大経卒。1966年日立造船入社。経理部配属後、シンガポールの子会社に出向。94年経理部長、98年取締役。専務を経て2005年に社長。10年会長兼社長。13年4月から現職。71歳。大阪府出身。

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