■経営者視点で提案しニーズ発掘
札幌信用金庫札幌駅北口支店で営業を担当した井神慎一郎氏は以前、一般企業の営業担当者だった経歴を持つ。その当時、金融機関の担当者を何人も見ており、取引先の業務に支障が出るような長時間の滞在や商品ありきの提案は逆効果だと分かっていた。その経験を生かし、経営者の視点に立った提案でニーズの発掘に努めた。
経営者との信頼関係を築くことができれば、さまざまな悩みが寄せられるようになる。JR札幌駅周辺や、支店がある同駅北口地区は新幹線の開通をにらみ、都市開発やテナントの新規入店が著しい。
そのため井神氏はローラー営業と同時に不動産関連の提案に注力した。「不動産売買を希望する企業や個人を紹介してほしい」という不動産業者の声も多かった。
各営業担当者は訪問先から得た情報を1枚のカードに集積しているが、井神氏は後輩2人にも、顧客カードで不動産に関する情報を定期的にチェックするよう伝え、訪問先の周辺の案件を頭に入れて営業に臨んだ。
井神氏自身は担当エリア以外の不動産情報も同僚からの報告で把握し、支店の営業エリア全域の不動産情報を活用して成果に結び付けた。一方、個人顧客の開拓では土地柄からオートロックのマンションが多いため、個人宅の訪問ではなく職域セールスでの顧客獲得を目指した。