【ビジネスアイコラム】日本郵政、上場へ高まる企業価値 (2/2ページ)

2014.10.9 05:00

 さらに注目に値するのはグループ内の資本の活用だ。端的に言えば、ゆうちょ銀の余剰資本をいかに活用するかが鍵を握る。みんなの党は、ゆうちょ銀が持つ約11兆円もの資本額のうち4兆円を取り崩し、国の財源に回すよう主張している。

 ゆうちょ銀の単体自己資本比率および単体Tier1(中核的自己資本)比率は、14年3月期の第3四半期で57.22%にも及ぶ。メガバンクの同比率が15%程度であることを勘案すれば、その比率がいかに大きいかが分かる。一方、国内銀行に求められる自己資本比率の最低水準は4%以上。極論すれば、同水準を超える余剰資本を取り崩すことは可能だ。

 そして、日本郵政が出した答えは、ゆうちょ銀の余剰資本のうち1兆3000億円を持ち株会社に移し、国営時代から抱える年金債務約7000億円を一括処理するとともに、残りの6000億円を日本郵便の成長投資に充当するというものだ。日本郵政は旧郵政省時代の恩給を支払う義務を負っており、上場に際して投資家が問題視する可能性が指摘されていた。

 こうした年金債務の負担は、日本郵政のみならず企業共通の課題。上場会社を中心に過剰な内部留保をため込みながら賃金引き上げに慎重なのは、実は年金の将来債務の引き当てが不十分であることが大きく影響している。日本郵政グループは、ゆうちょ銀の資本を活用することで、その頸木(くびき)からいち早く脱却する。上場に際して最も効果的なグループの企業価値向上策であり、まさに戦略性に富む施策と言っていい。

 日本郵政に続き、ゆうちょ銀とかんぽ生命保険の上場も視野に入っている。ある意味、今回のゆうちょ銀の余剰資本の活用は、それを先取りする施策と言い換えてもいいかもしれない。(ジャーナリスト 森岡英樹)

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