米IBMが開発した人工知能型コンピューター「ワトソン」の商用利用が拡大してきた。ネット上の膨大な情報など、人間が到底処理できない「ビッグデータ」を分析し、すぐに最適な選択肢を絞り込めるのがワトソンの特徴。三井住友銀行やみずほ銀行が来年から顧客対応のコールセンター業務に活用する方針で、日本でもさまざまな業種への応用が広がりそうだ。
「自分の頭で考えつかない料理レシピを提案され、新鮮だった」。こう語るのは、レストラン「レフェルヴェソンス」(東京都港区)の生江史伸シェフだ。日本IBMは4日、生江シェフとワトソンのコラボイベントを開催した。
IBMは6月に米国の人気料理雑誌と創作料理アプリ「シェフワトソン」を共同開発した。このアプリは利用者が食材や調理法を入力すると、100種類のオリジナルレシピを出してくれる。料理雑誌に掲載されたレシピをただ出すのではなく、季節やその日の気分に合ったレシピを提案してくれるという。
生江シェフのオーダーに対して、この日のシェフワトソンは、冬の街で冷え切った体を温めてくれるスープなどを提案し、イベント参加者をもてなした。
ワトソンは膨大なデータを分析するだけではなく、自然言語の解析能力や学習能力を持ち、人間と対話しながら知的作業を行える。三井住友銀行とみずほ銀行は、来年からワトソンを搭載したシステムでコールセンター業務を始める。両行のシステムはともに顧客とオペレーターの会話を聞き取り、最適な回答を提示するため、顧客対応業務の効率化が期待されている。