■待望の復活 若者の心つかむ武骨さ
トヨタ自動車が1年間限定で10年ぶりに復活させたスポーツ用多目的車(SUV)「ランドクルーザー」の70シリーズ(通称ランクル70)が好調だ。2014年8月25日の再発売から3カ月たった同年11月末時点の受注数は約5600台に上り、販売目標(月200台)の10倍近いペースで売れている。快適さを犠牲にしてでも耐久性、走破性を徹底的に追求した武骨な姿が、従来の熱狂的ファンに加えクルマ離れが進む若者たちの心をも捉えている。
燃費批判覚悟の限定販売
「うわぁ、すごいぞ。このクルマ」。12年4月、愛知県豊田市にあるオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」に、豊田章男社長の声が響いた。
この日、トヨタの役員を集めたランクルシリーズの試乗会が開かれ、急斜面やぬかるみなどの悪路をものともしない屈強な走りに歓声が上がった。
試乗会を企画した開発責任者の小鑓(こやり)貞嘉チーフエンジニアは頃合いを見計って切り出した。「04年に販売終了した70の発売30周年が14年に来ます。もう一度(ラインナップに)戻せませんか?」。すでにランクルファンとなっていた役員たちから反対意見は出なかった。小鑓氏は心の中でガッツポーズをした。