■落ちにくい避雷針 電気製品の故障低減
避雷針の先端はとがっている。そんな長年の固定観念を覆すのが、先端が半球体の不思議な形をした「PDCE避雷針」だ。避雷針に雷を集めることで被害を低減する従来の落雷対策を、雷が落ちにくくするという新たな次元で捉え直したPDCE避雷針。落雷抑制システムズは日本で初めて専門に扱い、地球深部探査船「ちきゅう」や京王電鉄の車両などに次々と納入している。還暦前後の男性3人が立ち上げた横浜の小さな企業が、落雷対策を根本から変えようとしている。
◆雲下部と同じ仕組み
PDCE避雷針は、スペインとフランスの間にある小国・アンドラ公国の会社によって開発された。
「これほど素晴らしいものをなぜ広める努力をしないのか」
独立前に勤めていた会社の取引先でPDCE避雷針を初めて目にした松本敏男社長(63)は、こう感じたという。従来は、雷を呼び込むことを役割としており、落雷後の電流の処理に大きな問題があった。落ちた雷は消えるわけではないからだ。
電流が地表を伝わり土壌によっては落雷場所から約100メートル離れた地点で人に感電することもあるほか、落雷による電位の上昇は周辺の電気製品に悪影響を与える。家電製品の故障や、高速道路ではETCシステムが停止する事故も起きており、ダムに落ちれば水位監視や放水、警報発出などができなくなることも予想される。
電力依存が進む社会の中で、落雷による「雷害」は致命傷になりかねない。工場や通信基地局など、雷害に頭を悩ませる事業者は、従来の避雷針の下に、地下で放電するためのアースを深く埋め込むなど、多額の費用をかけて対策を取っていた。
一方で、PDCE避雷針は、放電しにくいなめらかな半球体の上部に、雲の下部と同じマイナスの電荷を集めることで落雷そのものを避ける仕組みだ。