◆利害関係に巻き込まれない判断
--米国などと違い、日本では社外取締役を置くことのメリットがあまり実感できていない
「例えば、経営者の利益と会社の利益と対立する場合において、社外取締役は大きな役割を果たし得る。米国では裁判所は、社外取締役のみで組織する訴訟委員会が代表訴訟の追行が会社の利益にならないとの判断をした場合には、それを尊重して、代表訴訟を打ち切りとする。これは、代表訴訟の被告になっている経営者とは異なり、社外取締役は、株主の立場に立って判断すると考えられているからだ。いわば利害関係のない者が会社の利益とならないと判断したのだから、経営の専門家でもない裁判官は、それを尊重しようということだ。社外取締役は、敵対的企業買収の場合にもその役割が期待できる。敵対的買収のターゲットになった会社の経営者は、買収が成功すれば、辞めさせられるから、敵対的買収を受け入れた方が、企業価値が向上するときでも、買収に反対しがちとなる。そこで社外取締役のみで構成される第三者委員会を設けて、買収の受け入れの可否について判断してもらえば、利害関係に巻き込まれない判断ができるから、大きな役割を果たせると期待されている。日常の企業経営についても同様のことがいえる。経営者は、自己の経営成績を自ら本当に評価できるだろうか。試験で学生に自分で採点しなさいというようなものである。そこで社外取締役に評価してもらえば、より的確な評価ができる。社外取締役は、経営者ではないからである。これが、社外取締役によるモニタリングの中核となる。会社の資源を十分活用すれば、もっと業績が上がるはずなのに、それを怠っている経営者がいれば、究極的にその人を更迭できれば、会社の業績が上がるのであり、その経営者の経営成績を社外取締役に判断してもらおうというのが、そこでの狙いである」