ガス業界が、国内での普及が伸び悩んでいる天然ガス自動車(NGV)の復権に本腰を入れる。NGVはガソリン車やディーゼル車に比べ、二酸化炭素(CO2)や環境汚染物質の排出を削減できるとして脚光を浴びたものの、その後失速し、日本ガス協会が目標とする2030年の天然ガス自動車50万台達成は困難になっている。政府や自動車業界が「究極のエコカー」といわれる燃料電池車(FCV)の普及を優先させているためだ。こうした中、電気自動車(EV)やFCVに比べ輸送能力が高いことに注目し、安価な米国産シェールガスの輸入や、都市間長距離輸送に適した大型NGV投入などにより普及を加速する考えだ。
「FCVより優先」
「NGVの普及をまず進めなければならないのに…。水素ステーションに力を入れる余裕なんて、正直ない」
都市ガス大手幹部はこうため息をつく。
「水素社会の実現」は安倍晋三政権の政策の大きな柱。トヨタ自動車が世界初の市販FCV「MIRAI(ミライ)」を昨年12月に発売したのに合わせ、石油元売りのJX日鉱日石エネルギーと、ガス専門商社の岩谷産業はFCVに燃料の水素を供給する水素ステーションの整備を積極的に進めている。JXは2015年度末までに全国で40カ所、岩谷も20カ所まで増やす方針だ。