一般的に自動車の座席横のテーブルは折り畳み式が多い中で、グランクラスは格納式だ。稲留氏は他の社員に呼びかけ、出張の度に飛行機やバス、列車の座席テーブルの写真を撮ってもらい、それを手がかりに構造を考え、発泡スチロールと板で簡易モデルを作った。こうしたモックアップ(模型)作りも自動車の世界では日常のことだ。
鉄道向けだからこそ苦労したことも少なくない。自動車も鉄道も座席には20年程度使える耐久性が求められる。しかし使用者が特定されることが多い自動車に対し、鉄道を使うのは不特定多数だ。しかも早朝から深夜までずっと走り続ける。
稲留氏は「耐久性は自動車の10倍以上が必要」と判断し、シートを支える骨組みや座席を前後に動かすレール、座面や背もたれを倒すために動かす機構などはすべて一から開発、設計したという。