短期間で効率よく
開発期間も違った。自動車は開発から完成まで数年かけることが多いが、グランクラスの座席の場合は1年に満たなかったという。北陸新幹線用のE7系は、金沢開業の1年前にあたる14年3月から営業運転に入ることが決まっていたからで、試運転の期間を考慮すると、鉄道車両メーカーに納入するまでわずか数カ月しかなかった。「JRの関係者から『間に合わないのでは』と心配された」(傍嶋(そばじま)政道ACT推進部長)ほどだ。
そこでトヨタ紡織は試作の初期段階から、生産を担う富士裾野工場(静岡県裾野市)の担当者に、開発拠点である猿投工場(愛知県豊田市)に何日も泊まり込んでもらい、どうしたら品質の良い座席を効率よく生産できるかを議論。その都度、図面に反映させていった。
猿投工場では時間軸に沿った形で、それぞれの持ち場でやるべきことをすべて書き込んだ大きな紙を会議室に貼りだした。始業時と終業時、そして休憩時間にも従業員が必ずチェックした。打ち合わせなどもその部屋で行い、関係する全従業員が情報を共有できるように努めた。