実は、シャープ本社2階に経営幹部が集まる「大部屋」がある。社長が執務室を持たず、ほかの幹部らと机を並べる間取りは、風通しの良い「高橋流の風土改革」の象徴だ。方志、中山の両専務はそれぞれ別の部屋で執務しており、今回の更迭人事について、社内からは「大部屋という“密室”で決められた」と揶揄する声もあがる。
誠意と創意で具体的再建策を
何より社員らの不安は、新中期経営計画で打ち出された再建策に今後の成長戦略が乏しいことがある。人員削減は固定費を減らすため一時的に業績は回復するとみられるが、人材や技術の流出で中長期的にはジリ貧になる恐れがある。
すでにパナソニックは車載電池や住宅事業を成長の柱と位置付け、「脱家電」に舵を切ったのとは対象的に、シャープは今後も液晶テレビなどの家電ををインターネットで連携させることに活路を見いだす。「人に寄り添い、新しい価値を提供し続ける」との青写真を描くが、具体的に何をつくり、何で稼ぐかは見えてこない。
今こそ、創業者の早川徳次氏の言葉をもとにつくった創業理念「誠意と創意」を経営トップ自らが社内に示すべき正念場を迎えているといえる。そうでないとシャープの再建はもう後がない。