□石川和男・NPO法人社会保障経済研究所代表
「休眠預金」という言葉をご存じだろうか? 簡単に言うと、長い間出し入れがない預金のこと。金融庁によると、休眠期間が10年以上の休眠預金は毎年約850億円で、預金者からの返還請求で払い戻された残りは約500億円。これは、税引き後に金融機関の利益として計上される。
政治の場で、この休眠預金をうまく活用しようという動きが出ている。
もうかる仕事は放っておいても民間がこぞって行う。だが、もうからない仕事は政府や自治体が資金を出さないとなかなか進まない。これは世の常。だから、子育て・保育などの児童福祉、介護などの高齢者福祉、障害者福祉といった「社会的分野」に係る仕事は、公的な支援策がなければ民間からの資金調達は期待できない。こうした分野に補助金や保険といった公的支援策が施されているのは、そういう理由による。
近年、社会的分野に係る問題解決と収益確保の両立を図る新しい投資の在り方が、世界的に注目を集めている。「社会的インパクト投資」と呼ばれるものだ。これを進める上での問題は財源をいかに確保するかだが、諸外国では、まさに休眠預金をうまく活用する事例が出てきつつある。