■フロンティア・マネジメント 松岡真宏
企業が再生していく過程は、大病からの回復によく例えられる。悪性腫瘍などの大病や、交通事故で複雑骨折をするなどの大けがをした患者を想定しよう。こうした患者に漢方治療やはり治療を行っても、短期的な効果は見込めない。まずは、集中治療室で外科手術を行い、術後の様子を見ながら一般病棟での入院生活となり、その後に通院状態へと移行する。良くなる患者もいれば、完全に治癒するのが難しい患者もいる。
企業の再生も同様である。赤字に陥っている企業はもちろん、長期にわたって金融機関の貸出金利以下の利益率しか稼げない企業は、再生プロセスを行う必要がある。人間ドックのように、企業の現状を把握する調査プロセスを経て、病状にあった収益改善プログラムを策定する。大病を患っていることが分かれば、不採算事業の切り出しや拠点の統廃合など外科手術的なことを行う。
経営陣は、外科手術的な戦略をなるべく避けようとする。しかし、大病であれば漢方治療を行っても企業の収益力は改善しない。客観的な病状把握と、それに基づく合理的な経営戦略こそが、唯一の回復施策だと思われる。このように、企業の再生プロセスは、病人の回復プロセスと似ている。
早期発見、早期治療も同様だ。低収益という病を放置すれば、状況は悪化する。競争力がなくなった商品やサービスを提供し続ければ、マーケットシェアや評判は加速度的に悪化する。早めに問題を発見して、早期に手術や投薬を行うことの重要性は、病人も企業も全く同じである。また、希望的観測に基づく治療ではなく、客観的な数値に基づく治療も重要になる。病人が定期的に血液検査などを行い、検査結果の数値に基づいて治療法を決めるように、病に陥った企業も収益性や財務安全性などを客観的にチェックしてもらい、合理的な収益改善プログラムを作成しなくてはならない。