1919(大正8)年に生産を開始した「カルピス」は、7月7日に誕生から96周年を迎えた。誰もが、記憶のどこかに懐かしい思い出として残っている、おなじみの乳酸菌飲料。いつしか子供は親となり、さらにわが子や孫へ。今もなお、世代を超えて愛され続けている「カルピス」の誕生の歴史と、“心とからだの健康”に向き合う、最近の研究の一例を紹介する。
◇
創業者である三島海雲氏が、仕事で訪れた内モンゴルで遊牧民が飲んでいた「酸乳」(家畜の乳を乳酸菌で発酵させたもの)に出合い、そのおいしさと健康への効果を体験したことが、「カルピス」の原点だと伝えられる。三島氏は、日本で乳酸菌を用いた食品を生み出すために研究を重ね、乳を発酵させたものに砂糖を加えたクリーム「醍醐味(だいごみ)」の開発に成功。この製造過程で余る脱脂乳を乳酸菌で発酵させた食品「醍醐素」を発売した。ある日、醍醐素に砂糖を混ぜて1、2日放置したところ、偶然にも1本の試験管の中身がおいしく変化していることに気づく。これを商品化することを目指し、砂糖の混合率、酵母の種類、発酵・熟成に要した時間や温度など、さまざまな発酵条件の実験が繰り返された。
◆戦時中は平和物資として統制
三島氏は「おいしいだけではなく、健康に役立つものを作りたい」という思いから、当時、日本人の食事に不足していると指摘されていたカルシウムを添加し、栄養的価値をさらに高めた。こうして、日本初の乳酸菌飲料「カルピス」が1919(大正8)年7月7日に誕生したのである。