任天堂社長の岩田聡氏が7月11日に55歳の若さで死去した。任天堂は平成27年3月期に4年ぶりに営業黒字に転換したとはいえ、主力の北米市場での不振など課題は山積し、改革道半ばでの悲報。最後の表舞台となった6月26日の株主総会で、岩田氏は「娯楽ビジネスはお客様に驚いていただくことに価値がある」との“遺言”を残した。携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」や据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)」といった革新的な製品開発を主導した「天才」の後を継ぐ経営陣による立て直しが急がれる。(藤原直樹)
最後の表舞台で“遺言”
「雨はほんとに記憶がないんですよ」
京都市南区の本社開発棟で開かれた任天堂の株主総会で、同社幹部は空を見ながら、こうつぶやいた。株主総会は例年、梅雨の時期に開かれるが、任天堂の総会で雨になることはほとんどなかったという。
岩田氏はその1年前、胆管腫瘍の手術を受けたことを公表し、療養のため前年の総会を欠席した。今年の総会は、岩田氏が2年ぶりに出席するとあって、600人を超える株主がつめかけた。