憧れを呼び覚ませるか
そんな特別な関係がもろくも崩れ去ったかにみえた事件が起きた。平成24年に中国全土で吹き荒れた反日デモの暴徒化だ。暴徒は、パナソニックの山東省や江蘇省の工場にも容赦なく襲いかかり、関係者に衝撃を与えた。特別な関係などが現代の中国で通用しなくなったともいえ、中国における松下の位置付けも変える潮時とも考えられた。
それでもパナソニックは中国での社名について「将来、中国の法律でアルファベット表記の企業名が認められるようになれば、Panasonicに商号登記することがあるかもしれないが、今はそのような動きはない」とコメントする。
背景には、ただでさえ偽ブランド製品が横行する中国で社名から松下を外せば商品ブランドの混乱を招く恐れがあることもあるだろう。業界関係者は「松下を明け渡せば、パクリ業者が堂々と本家を名乗ることにもなりかねない」と指摘する。
いずれにしてもパナソニックが中国で「松下」で攻勢をかけ、再び憧れを生むプレミアム家電として成長の糧になりうるか。それが低価格路線で中韓勢に押される巨大市場攻略の突破口になれば、創業100年の平成30年に目指す連結売上高10兆円の道筋もみえてくる。