がん治療に希望の光
従来の抗がん剤は正常な細胞も傷つけるため副作用が多いが、患部に直接薬を届けるこの方法だと副作用を軽減できるという。片岡教授は「実用化すれば、日帰りのがん治療も可能になる」と話す。
がん患者やその家族にとって待望の治療法となる「ナノマシン」を利用した抗がん剤治療は、数年後の実用化を目標に臨床開発が進んでいる。
片岡教授の研究成果の事業化に挑むバイオベンチャーのナノキャリア(千葉県柏市)は、iCONM内に研究所を構えた。ナノキャリアの共同研究先の一つ、国立がん研究センター東病院(同市)の松村保広新薬開発分野長は、血管から離れて存在する難治性がん細胞の表面にある抗原を攻撃する「抗TF抗体」について長年研究を続けている。ナノキャリアはこの抗TF抗体を、がん細胞を見つけるセンサー役として表面に付け、内部に搭載した抗がん剤を、患部だけに放出して攻撃する新しいタイプのナノマシンの開発を進めている。新タイプは、治療が難しい脳腫瘍へも応用できる可能性があり、中冨一郎社長は「あと2年くらいかけて研究を進め、2018年には前臨床試験に進めたい」と意欲を示す。