□ルーセントドアーズ社長・黒田真行氏
一生で何度も経験することがないゆえに、ノウハウがたまりにくい転職活動。成否を決める最大の要素は、実は自分自身の中にあります。いわゆる“認知バイアス”というもので、転職を考える以前から見聞きした情報で、自分の頭の中に出来上がってしまった先入観が、数多くの選択肢をつぶしてしまうケースが非常に起こりやすくなっています。
先入観のタネは最初は小さくても、情報を調べれば調べるほど自分に都合のいい情報だけを集めて、さらに先入観を補強して自己増殖していく性質を持っています。いったんある決断をすると、その後に得られた情報を、決断した内容に有利に解釈していく心理メカニズムです。
バイアスが強い方の共通傾向としては、例えば「規模が小さい会社は(全て)○○だ」「○○の仕事は(全て)使い捨てにされる」「○○業界は(全て)ブラックだ」「○○業界は(全て)時代遅れで将来性がない」…というように、○○に当てはまるキーワードを全て同一視する現象が起こる傾向があります。
社長の人格も違えば、社史沿革も違う、一緒に働く人も全く違う別の会社が全く同じわけはなく、実際には百社百様なのですが、それが「全て同じ」に見えてしまい、反射的に排除してしまうパターンに陥ります。
当然、特定の業界や職種に共通する傾向や特色はありますが、実際にその会社で働いてみると、やはり違いは明確に存在します。一社一社の個性をひもといてみていくと、全く考えていなかった業界に、自分が大切にしていることが守れることがあったり、知らなかっただけで発見できていなかった能力を磨けるチャンスがあったりするのですが、認知バイアスが強くなればなるほど、それらの可能性が文字通り“秒殺”されてしまいます。