台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から再建支援を受ける方向で交渉中のシャープに、リストラの可能性が浮上している。シャープが鴻海の再建案を評価したのは、官民ファンド、産業革新機構の提案と違って、事業再編を通じた解体を否定し雇用の維持を強調していたからだ。しかし、鴻海の郭台銘会長の言葉にはリストラの具体策も垣間見え、最終合意を目指す今月29日まで予断を許さない。(織田淳嗣)
シャープの高橋興三社長は鴻海との交渉を優先させる考えを表明した今月4日の記者会見で「事業の一体性を保ちたい。雇用や生産地は最大限、維持してもらいたい」と説明。「(鴻海から)好条件で回答をいただいている」と語った。
だが、翌5日には両者の認識の違いが早くも明らかになった。郭会長はシャープ本社での高橋社長らとの会談後、報道陣に対し「赤字の太陽光パネル事業以外は残す」と表明したのだ。同事業からの撤退を考えているとみられ、生産拠点の維持には言及しなかった。
シャープの太陽光パネルは液晶と同様かつては世界シェアトップを誇った。現在もエネルギー事業全体の従業員数は約1700人、堺工場(堺市)などの大規模な製造拠点も抱える。