ただ、シャープも鴻海を全面的に信用したわけではない。過去にいったん合意したシャープへの出資を見送った経緯があるためだ。
シャープは、鴻海の7千億円規模の拠出額もさることながら、雇用の維持や事業の一体再生を約束したことを評価して交渉を本格化させた。しかし、高橋興三社長は「交渉の段階で出資金を下げるなど、理屈に合わないようなことがあれば提携には至らない」と牽(けん)制(せい)している。
この日、シャープ本社での高橋社長らとのトップ会談を終えた郭会長は「40歳以下の社員はリストラしない」と報道陣に明言したが、国内の生産拠点の存廃やベテラン社員の処遇には言及しなかった。
「シャープの赤字(の大半)は太陽光パネルから来ている」とも述べ、リストラを示唆した。提示した条件に微妙な変化をにおわす言葉に、シャープとの溝が深まる可能性がある。