□アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を続ける中小企業を紹介している。今回は世界初のトランジスタ・ポータブル魚群探知機の開発に始まり、その後も超音波技術を核に応用機器を製造販売している本多電子(愛知県豊橋市)の“池クジラ”ぶりを見ていく。
超音波技術は1912年のタイタニック号沈没事故後に、水中の氷山を探査するニーズが高まって開発が進んだ。56年に本多洋介社長の父が、世界で初めて小型軽量のトランジスタ・ポータブル魚群探知機を開発し、専業メーカーを設立。特に米国で高く評価され、80年代初頭には売り上げの約80%を米国向けが占め、魚群探知機で世界トップに上り詰めた。
しかし85年のプラザ合意以降の円高と87年のニューヨーク市場の株価大暴落、ブラックマンデーが業績を大きく揺るがした。当時売り上げの7割を占めた米国輸出はあっという間に半減した。
87年に就任した本多社長は、山積みの在庫を目の当たりにして拡大志向の過ちに気づき、米販売子会社を撤退した。このつらい経験から、事業の撤退・縮小は絶対にやってはいけないと肝に銘じ、長期安定的に利益を出し続けるために知恵を絞ることの大切さを痛感した。