子会社の東芝メディカルシステムズの売却先としてキヤノンに独占交渉権を与えた東芝(ロイター)【拡大】
東芝は医療機器子会社、東芝メディカルシステムズの売却益として6千億~7千億円程度を見込む。平成28年3月末の自己資本比率は、債務超過寸前の2.6%に悪化する見通しだけに、財務体質がある程度改善されれば、経営再建に向けて一定の前進となる。ただ、その他事業のリストラは遅れ気味で、再建への道のりは多難だ。(高橋寛次)
医療機器子会社を含むヘルスケア部門は、東芝の28年3月期業績見通しで、主要5部門のうち唯一、黒字を見込む。だが、医療機器子会社売却により同部門は解体となる予定だ。苦渋の決断に至った理由は、財務体質の悪化があまりに深刻だからだ。
自己資本比率は数字が小さいほど、抱える負債の割合が大きいことを示す。安定的な事業活動には少なくとも10%以上が必要とされるが、東芝の自己資本比率はこれを大幅に割り込んでおり、財務体質の改善は急務だ。主力取引銀行は「(東芝の財務を)しっかりと支える」(幹部)としているが、こうした支援も、医療機器子会社売却による数千億円の利益確保が前提だ。
当初、売却益は4千億~5千億円と予想されていたが、これを大きく上回る見通しだ。東芝は不正会計の影響で、短期の約束手形であるコマーシャルペーパー(CP)や社債の発行による資金調達が難しい状況にある。医療機器子会社売却で「資金繰りは大きく改善され、資金ショートに陥るリスクは小さくなる」(アナリスト)とみられる。
今後、東芝は赤字が続く白物家電とパソコンの両事業を切り離す方針だ。しかし、シャープとの白物家電事業の統合案は、シャープが台湾の鴻海精密工業傘下での再建を選び頓挫した。パソコンも、富士通などとの統合協議が長引いており、抜本的な構造改革はまだ道半ばだ。