東芝メディカルシステムズの買収で独占交渉権を得たキヤノンは、世界的に市場が縮小するデジタルカメラや複合機に次ぐ新たな成長の柱を模索し、積極的にM&A(企業の合併・買収)を進めている。東芝メディカル買収を機に、成長エンジンの一つと期待する医療分野の拡大を目指す。
キヤノンは、医療分野のほか、年率20%近い成長が続く監視カメラ事業などを新たな成長エンジンと位置づけM&Aを強化。昨年は3300億円を投じ、監視カメラ最大手のアクシス(スウェーデン)を買収し、世界首位に躍り出た。
それだけに今後の重点課題は医療事業の強化だ。眼科用検査装置を手がけるほか、傘下のキヤノンバイオメディカルが遺伝子診断用試薬の販売を開始した。痛みのない乳がん検査ができる超音波診断装置の開発も進めているが、事業規模はまだ小さい。
一方、東芝メディカルは磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)を得意とする。これらの装置を手掛けていないキヤノンにとって、東芝メディカルの買収は、高い相乗効果が得られる「千載一遇のチャンス」(田中稔三副社長)となりそうだ。(宇野貴文)