台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収する契約の締結が、当初の2月下旬の予定から大幅に遅れている。鴻海がシャープの財務や業績を見極めているためだ。シャープや主力取引銀行は決着を急ぐが、鴻海が次々と課題を出してきており、「4月以降にずれ込む」(銀行関係者)との声も出ている。
シャープの高橋興三社長や主力行の幹部は今週、台湾で鴻海の郭台銘会長と交渉に臨んだが合意に至らなかった。
関係者によると、鴻海は監査法人のお墨付きを得た業績を確認したい考えだ。在庫の評価損など新たな財務項目の計上も求めているという。2016年3月期の業績内容がはっきりする時期まで契約締結を延ばし、慎重に手続きを進めたい意向とみられる。
シャープに将来発生する可能性がある「偶発債務」の処理に関する協議も続けた。最大3500億円規模とされたが、精査した結果、問題視する債務を数百億円程度に絞り込んだ。このリスクに備えるため、鴻海は主力行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に、新たな融資枠の設定などの金融支援を打診。両行は一定の理解を示している。