米アップルはアイフォーンSEの発売で、同社の売り上げの4分の1を占める中国などの新興国市場で顧客層を広げる狙いだ。ただ性能は現行の最新機種「6s」などと同等で、機能面での目新しさを欠く。アイフォーンの販売が勢いを取り戻せるかは不透明だ。高く評価されてきたアップルの革新性に陰りが見えるとの指摘もある。
大消費地・中国の景気減速は、アップルにとって痛手だ。昨年10~12月の世界販売台数は0・4%増の7477万9千台と、伸び率が発売以来で最低だった。今年1~3月は減産を余儀なくされたもようだ。
調査会社BCNの道越一郎チーフエグゼクティブアナリストはSEについて「(需要の)隙間を埋める製品で、ある程度は売れるが、大ヒットするとは考えにくい」と分析する。MM総研によると、昨年の日本市場でアイフォーンはシェア4割と首位だったが、出荷台数は初の前年割れとなった。
電子部品メーカー幹部は、アップルについて「以前のようなイノベーション(技術革新)を起こす力を失いつつある」と指摘する。アップルは、売上高の約7割をアイフォーンに依存する収益構造からの転換を迫られている。(高橋寛次)