ところが、ボルボは開発の効率の最大化を狙って、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの同時開発という大胆な手を打つ。生産の規模がマツダの半分にも満たないということがその理由のひとつだったのだろうが、見方を変えると、それだけの小さな規模だったからこそ、大胆な開発手法をとるという発想が生まれたのかもしれない。人間万事塞翁が馬、ということか。
ボルボは、この新しいディーゼルエンジンの開発に大きな役割を果たした先進技術のひとつとして、新開発の燃料噴射装置をあげている。その名称はI-ART(Intelligent-Accuracy Refinement Technology)。デンソーとの共同開発だという。曰く、このデバイスは1回の爆発・燃焼行程で最大9回の燃料噴射ができる能力を備えているため、四つの気筒それぞれ個別に、燃料噴射のタイミングや噴射量を調整してその燃焼の最適化が図れる。
独自の発想、独自の技術にこだわる生き残り戦略
ディーゼルエンジンの燃焼にとって最も大切なことは、マツダのディーゼルエンジンもそうだが、燃料と空気が可能な限り均一に混じり合った混合気をつくり、それを自己着火させる(ガソリンエンジンと違って、ディーゼルエンジンには点火プラグがない)ことだ。