中沢さんは2007年に入社したカシオ計算機で、仲間と一緒にモノを作る楽しさに目覚めたという。携帯電話の開発に携わり、人物を美しく撮影できる「美撮りモード」の搭載などに貢献したが、同社が携帯電話事業から撤退したため退社した。
UPQに所属しているのは中沢さん一人だが、エンジニアやデザイナーらと“チーム”をつくって商品開発を進める。製造は中国の工場に委託。週に1回は、商品のサンプルを詰めて重くなったリュックを背負い、現地入りする。デザインやコストについて交渉して試作を繰り返し、低価格で独自性のある商品開発につなげてきた。楽しみながらも妥協しないのが流儀で、「手を抜かずにがんばれば、誰かに大事に使ってもらえるモノが作れる、というのがこの仕事の魅力」(中沢さん)と言う。
シャープがEMS最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り、東芝は家電事業を売却するなど、業界は元気がない。中沢さんは「家電はすでに一般の欲求を満たす機能を備えていて、スペックを上げても(消費者の)気持ちが追いついてこない。私たちは、詰め込みすぎていた機能をシンプルにして、商品として“飛び抜けさせる”ということをしていきたい」と話している。(高橋寛次)