血液製剤の不正製造問題で業務停止処分を受けた化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)に対し、医薬品の出荷停止で損害を被ったとして、帝人が損害賠償請求を検討していることが4日わかった。被害額の算定などを最終調整している。出荷停止にからむ化血研への損害賠償請求は行われていないが、帝人が踏み切れば他社にも影響がでそうだ。
帝人の医薬品子会社、帝人ファーマは、川崎病やギランバレー症候群の治療に有効な血液製剤として、化血研が製造する免疫グロブリン製剤「ベニロン」の販売を手がけている。
化血研は昨年5月、国の承認と異なる方法で血液製剤などを製造していたことが判明。6月に厚生労働省が血液製剤の出荷を差し止めた。ベニロンは代替品がないなどの理由から例外的に出荷が認められた。だが、安全性確認の作業などが間に合わず供給が停止。帝人ファーマの持つ在庫が払底し、供給再開のめどがたたないことから、帝人ファーマは他社製品の使用を呼びかけていた。帝人は販売機会の逸失分や、他社製品への代替により損失を被ったとして、化血研に賠償を求める考えだ。
化血研は過去最長となる110日間の業務停止命令の処分を受けている。ただ、化血研しか製造していない医薬品もあり、全製品の8割近くは例外的に出荷を継続している。だが、実務面での影響も出ており、帝人以外の医薬品各社も、化血研に対し損害賠償を求めるとみられる。
化血研は、血液製剤やワクチンの製造など主力事業を、製薬大手のアステラス製薬に売却する交渉に入っている。今後、損害賠償請求が増えれば、事業の売却交渉にも影響を与える恐れがある。