【1000万台の野望】(上)
「カルロス・ゴーン(日産自動車社長)氏が三菱自動車を欲しがっている」
5月初旬。大型連休で閑散とする東京・霞が関でこんな情報がひそかに出回り始めた。燃費データ不正問題で窮地に陥った三菱自を、救済に消極的だった三菱グループではなく、日産が救う-。三菱自単独での再建は難しいとみていた経済産業省の幹部は「これで再生の可能性が出てきた」と、強い期待感を寄せたという。
関係者によれば、日産と三菱自の提携話が動き出したのは大型連休に入った5月。ゴーン社長と三菱自の益子修会長が極秘裏に会談し、提携に向けた意思を互いに確認しあった。
2011年の軽自動車事業での提携以降、2人は親交を深め、互いに「信頼できる」と認め合う仲。不正問題からの生き残り戦略を模索する三菱自にとって、トップ同士が信頼しあう日産以外の傘下で再建を目指すという選択肢はなかった。