最近投資家の方から以下のような質問を良く受ける。日銀は国債を大量に買って保有しているが、国家の借金を子会社である日銀が保有しているのであれば、結局貸し借りが相殺されて、実際には日本の借金は少ないのではないか。というものだ。産経本紙の読者は経営層が多いので、この手にだまされることはないと思うが、ベテランの市場関係者でも惑わされることもあるので、ここで整理しておこう。
日本銀行ホームページから今年5月末の営業毎旬報告(バランスシート)を読むと、資産の部が426兆円、このうち約371兆円が国債に投資されている。これは日本の公債発行残高の約3分の1強である。一方で負債の部では、合計額はもちろん資産側と一致してバランスするが、主な項目は日銀券発行残高が95兆円で、日銀が市中銀行から資金を預かる当座預金が287兆円となっている。よく日銀はお札をどんどん印刷して国債を買っているという人がいるが、そうではない。グラフにあるように日銀券の発行残高は安定している。