フランス南部ニースで群衆にトラックが突入し、多数が死傷した事件を受け、海外に進出している日本企業は改めて危機感を募らせている。世界的にテロが相次ぎ、警備が比較的緩やかな「ソフトターゲット」が狙われるケースも目立ち、いつ被害に遭うか分からないからだ。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日本企業がニースに進出している例はあまりないという。大手商社の欧州担当は「イタリア国境に近い保養地で、ビジネス上で行くことはほとんどない」と話す。
ただ、相次ぐテロに、従業員の安全をどう確保すればいいか神経をとがらせている企業は多い。新日鉄住金グループの幹部は「グローバル展開を進めれば進めるほどリスクにさらされる」と指摘する。慎重になりすぎると海外に出て行けなくなるため線引きは難しいという。「社員の命を守る責任があり、危機に対する感度を高めていきたい」とも語った。
東芝は、不特定多数の人が集まる場所や公共の交通機関は注意するよう社員に呼び掛けた。大手商社の広報担当者は「どのような対策を取っているかがテロに利用される場合がある」と話し対応を明らかにすることに慎重だった。