地域を元気にする不動産会社 大里綜合管理・野老真理子社長 (1/3ページ)

大里綜合管理野老真理子社長
大里綜合管理野老真理子社長【拡大】

  • 大里綜合管理本社1階で開かれているコンサート。地域住民が大正琴を披露している=千葉県大網白里市

 東京から電車で1時間余り、千葉県大網白里市にある不動産会社、大里綜合管理。本社2階の食堂には毎日、地元住民が訪れる。お目当ては地元の主婦などが調理する日替わりのランチメニューだ。昼食を済ませると、どこからともなくメロディーが。1階のロビーでは週2回、地元の音楽愛好家によるコンサートが開かれる。取材したときは、大正琴のアンサンブルが催され、心和むひとときを味わえた。

 ◆食堂、教室、学童…

 同社は地元密着経営で、バブル崩壊後20年以上にわたる「不動産冬の時代」を見事に乗り越えた。1975年、野老(ところ)真理子社長の母親が創業した当時はごく普通の街の不動産屋だった。94年に世代交代を迎え、野老氏が社長に就任した頃にバブルが弾け、「このあたり一帯は不在地主による土地が点在し、なかには草木が生え放題になっているものもあった」(野老社長)という。

 社長就任から3年目の96年、ある土地の樹木伐採作業で地元大学生の尊い命を事故で失った。「あのとき、なぜ見張りを付けなかったか。なぜそのことに気付けなかったか、後悔の念が消えなかった」。この事故をきっかけに、同社は大きな変革を遂げることになる。

 事故の翌日、午前7時半に全社員を集めて会社内や作業場などの清掃を1時間かけて行った。「日々の作業前の清掃を通じて、道具の不具合など何かに気付くことが事故の防止につながることを学ばない限り、改善はできない」と考えたからだ。この清掃活動、今では周辺の道や駅、海岸などオフィスの外にも広がっている。