9月粗鋼生産、6カ月ぶり前年割れ 自動車・建築弱く回復懸念

鉄鋼業界で内需の回復遅れが懸念されている=広島県福山市のJFEスチールの西日本製鉄所福山地区
鉄鋼業界で内需の回復遅れが懸念されている=広島県福山市のJFEスチールの西日本製鉄所福山地区【拡大】

 鉄鋼業界で内需の回復遅れが懸念されている。もともと秋以降の回復が見込まれていたが、9月の粗鋼生産量が6カ月ぶりに前年実績を下回るなど、力強さを欠く状況が続く。いずれ回復するとみられてはいるが、中国発の鋼材価格下落や円高に苦しむ業界にとって、想定外のリスクとなりかねない。

 「力強さは欠くとはいえ、回復の足取りはかなり底堅いと思っている」

 日本鉄鋼連盟の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)は24日の会見で、先行きについて楽観的ともとれる見方を示した。

 確かに、鉄連が20日に発表した2016年度上期(4~9月)の粗鋼生産量は、前年同期比0.9%増の5253万9000トンと、わずかながら増加した。過剰な状態が続いてきた主要3品種(熱延、冷延、表面処理)の在庫も、7月は適正かどうかの目安となる400万トンを切り、8月も季節要因で増えたとはいえ、前年より20万トン少なかった。

 しかし、9月の粗鋼生産量は1.5%減の844万2000トンと、6カ月ぶりに減少した。「自動車や建築向けともに依然として弱い」(鉄連)のが理由だ。秋以降は2020年東京五輪の関連需要も顕在化するとみられていたが、「はっきりとは現れていない」(鉄鋼大手)。

 業界は、中国の過剰生産による市況悪化や円高に苦しんできたうえ、直近では中国の生産調整で石炭価格が急上昇し、製造コストを押し上げている。進藤会長は「(短期的な動きには)一喜一憂はしない」と語るが、内需の回復遅れは、ただでさえ悪化する業績をさらに押し下げる可能性も否めない。