□ゼスト創業者・伊藤由起子氏に聞く
ゼストは、代表の伊藤由起子氏とともに主要事業を少しずつ変化させながら生まれ変わってきた。現在は、行動予定表自動化システムのクラウドサービスを提供するが、その道のりを振り返ると、バブル崩壊やITバブル崩壊などを経て日本のスタートアップや中小企業がどのように変化してきたかが分かる。
1988年の創業時、ゼストはソフトウエア開発を請け負う企業であった。当時、テクノロジー系の中小企業としてはこれがほとんど唯一の選択肢だったと言ってもよいだろう。日本で女性がプログラミングやソフトウエア開発をすることがとても珍しかった時代に、伊藤氏はどのようにその世界に足を踏み入れたのか。そして、女性が営業の電話をかけることすら珍しかった時代に、事業をどのように拡大させていったのだろうか。
◆効率的に人員管理
--行動予定表自動化システム(英語でフィールドサービス・マネジメント・ソフトウエア)とは何ですか
「必要とされる現場で行われる複雑な仕事のために、人員や機材のスケジュールを管理し、効率的に派遣するためのシステムです。たとえばエレベーターやエスカレーターの保守点検、建築確認などに使われています。多くの企業はエクセルの日程表で検査のスケジュールや担当者の休日を一括管理しています。オフィスにホワイトボードを置いて管理しているという会社もあります。しかし、たとえば20人のスタッフが、地域もばらばらでそれぞれ異なる要請をする400カ所に派遣される場合、正確性を担保することも大変ですし、ましてや最適化することなどほとんど不可能です。移動時間や担当者の保有資格などを考慮に入れなければ、かなりの無駄が出てしまいます」