【知恵の経営】現場重視・全員参画で成長 (1/2ページ)

　□アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

　独自の「池（市場）」を見つけ出して、その池の「クジラ（圧倒的なシェアナンバーワン）」となり、高収益を獲得・維持している中堅中小企業を紹介している。今回は自動認識ソリューションの開発、製造、販売、保守メンテナンスを行うサトーホールディングス（ＨＤ）の池クジラぶりを見ていく。

　同社は１９４０年に佐藤陽氏が創業した。「あくなき創造」の社是の下、６２年に世界的ベストセラーとなったハンドラベラーを開発。「商品一つ一つに値札を貼る作業を見て『何とか楽にできないか』」と考えたのがきっかけだ。６４年にはハンドラベラー用ラベルの製造も始め、機械メーカーの枠を超えてサプライ事業にも取り組んだ。７０年代に小売店にＰＯＳ（販売時点管理）システムが広がり、８１年に世界初のバーコード用熱転写式プリンターを製品化。モノに情報を付加するタギング（タグ付け）分野のトップ企業となって次々と異分野ソリューションを開拓した。

　成功要因の一つは創業時から続く「現場力」。ライバル企業の多くは、面倒で手間のかかる現場には行かずメーカー機能に特化した。だが、サトーＨＤは現場重視を貫き、機器と消耗品の最適な組み合わせの仮説を現場で検証して顧客へのソリューション提供を可能にした。

　２つ目は「全員参画経営」の実現。具体的には「三行提報」の実行である。家族と社員を路頭に迷わせたくない一心で社業に邁進（まいしん）したが、戦後の経済状況は厳しく多くの企業が生産停止や労働者の一時解雇に踏み切った。一方、労働者は４６年に施行された労働組合法によって新たな権利を獲得。労使間でさまざまな対立が生まれ、労働争議が増加する状況にあった。