こうしたなか、コンピューターを活用して、さまざまな印刷に対応できるインクジェットプリンターの開発に乗り出した。これまでの機械メーカーから脱皮するため、会社にはいなかった電子技術者を採用した。
段ボールなどに印字する産業用インクジェットの技術は、事務機用に比べて大きなインク滴を遠くまで飛ばす必要がある。また、アルファベットや数字だけでなく、漢字やひらがな、カタカナなどがある日本語に対応する必要もあったが、新たに導入した技術によって独自のインクジェットプリンターの開発に成功した。
◆特殊インクに挑戦
その後、全国で食品偽装の問題などが発覚するなか、食品にも印刷できるインク開発に挑戦。鶏卵の殻に賞味期限などを印字できる食品添加物を使った可食インクを開発、99年に発売した。こうしたノウハウは、錠剤薬に薬品名などを印字できるインクも作り上げて業績を伸ばしている。
自社開発にこだわり、2002年には、インクとヘッドの開発部を設けた。「初めはヘッド部品を米国から買っていたが、ヘッドを買うとインクも買わないといけない。それでは面白くないので、インクもヘッドも作ろうと、それぞれ開発部もつくった」という。
機械から電子、インクの開発と、ニーズに合わせて新たな分野へと挑戦し続けている紀州技研工業。釜中社長は「世の中の変化に合わせて技術も変化させる必要がある。マーケットが小さくても最先端でいることが大切だ」とモノ作りにかける思いを語った。(木村成宏)