一方、事業の切り売りで資金を捻出する案もある。ただ、東芝は不正会計発覚後、エアコンなどの白物家電子会社を中国の美的集団に、医療機器子会社をキヤノンに売却している。売却できる大きな事業が少なくなる中、主力の半導体事業を分社化し、上場して資金を得る案も浮上している。だが、業績を牽引(けんいん)する「虎の子の事業」(関係者)を切り出せば、東芝本体の稼ぐ力が低下してしまうジレンマがある。海外の半導体メーカーに株式を買い占められる恐れも生じかねない。
こうした状況を踏まえると、最もあり得るシナリオは金融支援だろう。東芝は既に主力取引銀行のみずほ、三井住友両銀行などと具体的な協議に入った。
選択肢に挙がるのは、借金の一部を株式と交換する「債務の株式化」のほか、議決権がない代わりに配当を優先的に受けられる「優先株」を銀行に引き受けてもらう案だ。ただ、東芝の経営の先行きが見通せない中、いずれも「リスクを背負うことになるので銀行にとっては重い判断」(メガバンク関係者)。東芝は銀行団の理解を得るため、一段のリストラを迫られる可能性がある。
28日には格付投資情報センター(R&I)が東芝の発行体格付けを2段階引き下げ、社債発行も当面困難になった。また、格下げを受けて銀行からの借り入れ条件である「財務制限条項」に抵触する恐れが出てきた。条項に抵触すれば、金利引き上げや債務返済を求められる恐れもある。東芝は、銀行主導の再建策を受け入れざるを得なくなるかもしれない。(万福博之、米沢文)