トヨタ自動車など自動車大手の労働組合が15日、賃上げなどの要求を一斉に会社側に提出し、2017年春闘の労使交渉が本格的に始まった。大手企業の多くが17年3月期の業績予想を上方修正しているが、米トランプ政権の今後の政策によっては円高などが業績を圧迫する恐れがあり、労使交渉は難航も予想される。自動車業界は春闘相場のリード役だが、貿易不均衡の是正を掲げるトランプ政権の標的となっているだけに、“トランプ政策”をどう織り込むかが今年の春闘交渉の最大の焦点ともなりそうだ。
自動車大手各社の労組は、従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分で、3000円を要求。富士重工業労組の山岸稔執行委員長は15日、「グローバル競争の中で努力してきた職場の思いを込めた要求だ」と訴え、吉永泰之社長に要求書を手渡した。
今春闘は、安倍晋三首相が大手企業に対し賃上げを呼びかける「官製春闘」の4年目。デフレ脱却に向けた経済の好循環を進めるために、経団連も春闘方針で、昨年よりも踏み込んだ表現で賃上げを呼びかけるなど、労使が賃上げの必要性では認識を共有している。
円相場も1ドル=110円台半ばとなり、輸出企業を中心に業績改善が見込める。日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは「昨年は大手がベアと定期昇給をあわせた賃上げで2%を確保したが、今年はそれを上回る賃上げが期待できる」と予測する。