LNG、船舶向け事業に商機 大手商社、供給過剰の「救世主」期待 (2/3ページ)

港に接岸した火力発電用のLNGを積んだ大型船、奥は貯蔵用のタンク=大阪府堺市西区(本社ヘリから)
港に接岸した火力発電用のLNGを積んだ大型船、奥は貯蔵用のタンク=大阪府堺市西区(本社ヘリから)【拡大】

 先月15日。パキスタンLNG社が同国向けのLNG調達の入札結果を公表した。三菱商事や三井物産、丸紅が関心を示していたが、蓋をあけてみると契約はスイスを本拠地とする新興トレーダーのガンバ社にさらわれた。イタリア炭化水素公社(ENI)やマレーシア国営石油のペトロナスなど名だたるLNG資源会社を押しのけて新興トレーダーが受注したことに、各社には驚きと落胆が交錯した。新興トレーダーは新興国でビジネスが頓挫するリスクを恐れず、入札で攻めの低価格を提示して大手商社や資源メジャーを出し抜いた格好となっている。

 それでも大手商社は平静を保っている。「今後は安く調達できる価格だけではなく、船の効率手配や上流権益を保有する安定性など総合力の勝負になる」(大手商社幹部)とみているからだ。新興国に資源開発からFSRUや輸入基地のプロジェクトまでトータルで提案できるのは、大手商社の大きな強みという。

 これまでのLNGビジネスは日本の電力会社向けの長期契約を保証に金融機関からプロジェクト資金を借り入れ、大規模な資源開発を行う形態が主流だった。

 電力会社はライバル

 しかし、供給過剰による資源安でオーストラリアなどの大型の開発プロジェクトは相次ぎ延期。一方で大口顧客の電力会社は、東京電力ホールディングスと中部電力が燃料調達の合弁会社「JERA(ジェラ)」で自らシンガポールに販売拠点を置くなど、販売・調達の一部ではライバルという複雑な関係になりつつある。電力会社と長期契約を結ぶにはこれまで以上に、資源開発と一体となった販売力が求められる。

大手商社や資源メジャーは自ら需要を創出しようとあの手この手