昨年2月に16年12月期の期初予想を公表した時点では、本業のもうけを示す営業損益が20億円の赤字になるとしていた。しかし、終わってみれば84億円と、それを大幅に下回った。昨年6月には、全社員の約2割にあたる250人の早期退職募集に追い込まれ、249人が応募している。
同社が見通しを誤った理由のひとつに、バーバリーの後継として15年7月に投入した新ブランド「マッキントッシュロンドン」の不調がある。
マッキントッシュは英国の老舗ブランドで、布地の上にゴム素材をコーティングした「ゴム引き」のコートで知られる。三陽商会では、その流れをくむ新ブランドの立ち上げで、ファッションに関心の深い45歳以上の男女をつかめると踏んでいたが、バーバリーの抜けた穴を埋めるには知名度が低すぎた。
だが、業績悪化の理由はそれだけにとどまらない。
「百貨店の売上高の縮減が大きかった」
岩田社長は、不振の理由をそう分析する。
実際、百貨店における衣料品販売は不振を極めている。日本百貨店協会の調べによると、16年の売上高は前年比2.9%減の5兆9780億円と、36年ぶりに6兆円を割り込んだ。中でも約3割を占める衣料品は6.1%減と、大幅に減少した。中間層の節約志向、ネット通販の普及、ファストファッションの躍進、少子高齢化と、減少の理由を挙げればキリがない。