平成29年春闘で、自動車、電機大手のベースアップ(ベア)が軒並み前年を割り込んだのは、過去3年のベア負担が経営を圧迫し積み上げ余地が限られてきたからだ。企業の“ベア疲れ”で、安倍晋三政権が目指す経済の好循環実現の起点になる賃上げは正念場を迎えた。(今井裕治)
「減益の見通しや将来的な不安を考えると前年並みのベアは難しかった」
15日、愛知県豊田市で記者会見したトヨタ自動車の上田達郎常務役員はこう打ち明けた。ベア月額1300円は、前年実績を200円下回る。トヨタの29年3月期連結決算は昨年までの円高が響き大幅な減益予想で、自動運転など先進技術の開発競争の激化も経営を圧迫しているためだ。
ただ、トヨタは賃金が日本経済に与える影響も勘案し、ベアとは別に、子育て世代への手当を拡充。第2子以降を対象に、当初は33年までに段階的に引き上げる予定だったが、4月に前倒しする。平均1100円の上積みで月例賃金にも含まれるため、ベアと合わせ計2400円の賃金改善になる計算だ。上田氏は「4年限定の『ワンショットベア』だ」と強調した。
過去3年のベアで自動車大手は「既に他の製造業に比べて高い賃金水準にある」(幹部)。トヨタですら、ベアと手当てを使った合わせ技を使わなければならないほど、ベアの上積み余地は限られている。