GMのPSAへのオペル売却についても、GMが欧州事業から事実上撤退することで、FCAとの欧州でのビジネスの重複がなくなり提携が進めやすくなるとの見方もできる。
経営者としてもマルキオンネ氏は個性的で、「業界の異端児」と呼ばれてきた。イタリアとカナダの国籍を持ち、ファッションも独特。スーツはめったに着用せずセーターをさらりと着こなす。片時もたばこを離さないチェーンスモーカーとしても有名だ。各国の自動車ショーでマルキオンネ氏が登場すると、たちまち人だかりができ、「まるでロックスター」(業界関係者)ばりの人気者。もちろん社内での存在感は圧倒的で、英紙フィナンシャル・タイムズは「側近を従えた独裁者のようにフィアットとクライスラーを経営している」と評する。
ただ、こうしたあくの強さが業界では警戒もされる原因になっている。GMがつれないのも、バーラ氏を含む経営陣がマルキオンネ氏に主導権を握られて振り回されることを嫌っている、との見方は多い。GMのアマン会長は米メディアなどに「FCAとの経営統合に以前も関心はなく、さらに薄れている」と冷ややかに語った。
米国民のビッグ3への愛着も深い。欧州でバッティングする事業がなくなっても、FCAがクライスラーに続きGMまで飲み込むとなれば、「寡占の問題からも米当局は黙っていない」(業界関係者)だろう。