大日本印刷が開発したDNP採光フィルムは、従来の断熱性、遮熱性という機能性とは異なるもので、近年、注目されている。また、同社の「DNP超耐候ハードコート転写フィルム」は紫外線による劣化を抑え、樹脂表面の耐摩耗性の向上、高い透明性を実現した。同社は、ポリカーボネートなどの樹脂と合わせた「樹脂ガラス」として展開していく。同社は「市場自体は自動車、建築用途などで増えるとみている」としており、製品開発を強化している。
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DNP採光フィルムが開発できた背景には、大日本印刷のコア技術の応用へのあくなき追求があった。
「本当にやれるかどうかはともかく、部屋の中で光をどうやったら多く採り入れられるか」(同社の山口正登常務執行役員)という課題から始まった開発物語は、光学フィルムの「光をコントロール」するという自社のコア技術の応用という結論を導き出した。
ただ、この結論を実証するためには、生活空間を再現する“家”が必要だった。同社は、自社の研究施設内に実証実験棟を建設し、DNP採光フィルムを実用化するための地道な検証作業を行った。
その結果、もともと、オフィス向けに検討していたが、北側の日当たりの悪い室内でも想定以上の採光が得られることを確認した。採光フィルムの用途拡大が期待されている。
DNP採光フィルムは、第26回地球環境大賞の「日本経済団体連合会会長賞」を受賞した。食品の包装から始まった大日本印刷の高機能フィルム開発は、環境問題への対応にとどまらず、快適な住空間の創出や産業資材分野などで大きな成果を挙げている。(鈴木正行)