■好材料あれば新規でも無担保融資
「製造業なら工場や製品、運送業なら車両や貨物、小売業であれば商品や店舗を見なければ、お客さまの事業を真に理解することはできません。今はインターネットで多くのことを調べられますが、現場に行かないと体験できないこともあります。例えば、食肉の流通を行う会社を開拓したときは、冷凍設備を見学させていただき、どういった設備を用いて、どんな環境で品質管理を行っているか身をもって知ることができました」
これが、企業や業界の実態を深く知ることを心掛けている京葉銀行柏支店の秋葉洋平次長の姿勢だ。
秋葉氏は新規開拓の対象を売り上げ10億円以上の企業としているが、中には財務状態が芳しくないところもある。そうした企業についても秋葉氏は実態を徹底して把握し、担保・保証に過度に依存することはない。
ある建設業への融資が好事例だ。同社は連続して赤字だったが、経営者にヒアリングを行うと、赤字は特殊要因が重なったためで、事業の地力はあると考えられた。先代経営者が亡くなって退職金の支払いが発生したり、不良資産の売却で固定資産除却損が発生したりしていた一方、大手ゼネコンから直接受注を得るほどの技術力を持っている。しかも、発注元のゼネコンはさまざまな経営支援を行うほど同社を高く評価していることも判明した。
建設業は2020年の東京五輪や震災復興の本格化という好材料もある。このため、新規先にもかかわらずプロパー・無担保で融資を実行。その後、同社は見事にV字回復を遂げたという。顧客のことを知り、一歩も二歩も踏み込んで実態把握に努めたからこそ実現できた支援といえる。