ゆらゆらと揺れる大きな炎で近年、魅力が見直されている和ろうそく。その材料となる木蝋(もくろう)づくりの伝統を守り、地域の力にしようと長崎県島原市の本多木蝋工業所3代目の本多俊一さんは奮闘しています。
砕いたハゼの実を圧搾機にかけて蝋を採る「玉締め式製法」は江戸時代からのもの。原材料の3分の1から半分を捨てるので採算は悪いけれど、薬品を一切使わない、人や環境に優しい技術です。所内の「櫨(はぜ)の道資料館」では木蝋、和ろうそく作りや絵付けが体験できます。修学旅行生やツアー客が訪れ、特に外国人参加者は日本の伝統技術に目を輝かせるそうです。
洋ろうそくや電灯に押されて和ろうそくは衰退、26年前の普賢岳大火砕流でハゼ産地は大被害を受けました。利益より伝統にこだわり、「生きた生涯学習の場を作りたい」と話す本多さんからは、島原の木蝋づくりを取り巻く厳しい状況に負けない、との思いが伝わります。
3月に約40年に及ぶ教職を退き、休日限定だったこうした活動も本格化。住民やかつての教え子たちの協力で、和ろうそくを生かしたコンサートを開くなど地域の輪も広がっています。1792年の雲仙・普賢岳大噴火からの復興を支えた木蝋と和ろうそくが再び輝きます。
【プロフィル】中村直美
なかむら・なおみ 長崎文化放送、NHK長崎を経て、現在、FM NACK5でニュースアナウンサー、各種司会として活動中。
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