ヒノキを鉄骨並みの強度に 高知・室戸市のドーム、森林活用で画期的技術 (2/3ページ)

  • ラグスクリューとジョイントコーンを取り付けたヒノキの丸太

 鍵の接合部を工夫

 そして実験を重ねた。繊維の塊である木を鉄のように利用する鍵は接合部にあると考え、大型の金属ねじ「ラグスクリュー」に樹脂を絡め、ねじ穴と密着させる方法に到達した。

 建材として必要な「引っ張り強度」実験では木は割れず、ラグスクリューは抜けずにちぎれた。鉄骨並みの強度を持つキトラスは2013年6月、指定確認検査機関の技術性能証明を取得した。

 「地元の協力があってこそ」と今井所長は振り返る。森林県である高知の室戸市には、キトラスの可能性を信じる人々がいた。

 よく乾燥させるためヒノキは14年秋、同市吉良川町の森林から約670立方メートルを切り出した。県の予算がつく前だったため、費用約1500万円は、地元企業の「富士鍛工」が負担した。

 ■作業簡略化、市民も参加 地産地消に県議会が予算

 乾燥した丸太の加工は2015年2月から始まった。作業場は、廃校となった水産高校の校舎を利用。デジタル計測し高精度切断で長さをそろえた丸太を並べ、金属接合部を取り付けた。

 作業は(1)穴開けとねじの溝づくり(2)樹脂の注入とラグスクリューのねじ込み(3)接合部品の一部「ジョイントコーン」取り付け-の3段階。正確に穴を開ける器具を開発して作業を簡略化した。

「工程がシンプル」な生産ラインはトヨタがお手本