日本郵政の業績悪化で、政府が保有する同社株の売却に遅れが出ることが懸念されている。東日本大震災の復興財源の確保に影響する可能性があるほか、「政府系企業」からの脱皮が遠のき、日本郵政グループ全体の成長にも阻害要因となり得る。
政府は2015年の日本郵政グループ3社の上場に伴って一部の株式を売却し、約1兆4000億円の収入を得たが、今も株式の8割超を保有する。今後、3分の1超を残し、22年度までに数回に分け追加売却する方針。約4兆円を確保し東日本大震災の復興財源に充てる計画だ。
今年3月には2次売却に向け、株主である財務省が主幹事証券を選定したが、株価が低迷していると十分な収入を得られないため、売却をためらう可能性がある。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険についても、それぞれ株式の8割超を日本郵政が保有。金融2社は間接的に政府の支配を受けていることから、新規業務への参入などについては政府の認可が必要だ。株売却が遅れれば、両社の経営の自由度は制限され続ける。
日本郵政株は上場当時の高値を2割超も下回る水準が続く。
今回の業績悪化による日本郵政株の売却スケジュールへの影響について麻生太郎財務相は25日の会見で、「今の段階では何とも言えない」と言及を避けた。日本郵政の長門正貢社長は同日、「財務省にお任せしている。われわれの責務はいい経営をしていくことだ」と強調した。(高橋寛次、中村智隆)